BOY MEETS GIRL
俺の名前は 相原 武史
男子校に通う高校1年だ。
あまり人には言えんが、中学の頃は、いわゆる不良系だった。
成績がそこそこだったので、何とか高校に進学できたけど。
俺の仲間うちでは、みんなカノジョをほしがってた。
男子校なので、漫画に出てくるような出会いは期待できないし、
じゃ、大学で探すかといっても、俺の頭と経済力じゃ期待できない。
かといって就職、といったってまだやりたい仕事が見つからない。
早朝、新聞配達のバイト→学校で寝て→部活に出て→またバイト、
ツレと遊ぶ→休みの日、たまにバンドやる
そんな日常の繰り返しだ。
部活は、吹奏楽部にはいってる。
「柄じゃねーよ」と悪友は笑う。俺もそう思う。
俺の行ってた学校は必ず何かの部活に入らなきゃならない。
オリエンテーションで「吹奏楽部は女にもてるぞ」という先輩の一言で入った。
入ってみて最初は後悔した。こんなに拘束時間が長いとは。
楽器に関する消耗品代、合宿代等、結構金が飛んでいく。
事情があって親に小遣いもらえない身なので、バイトに明け暮れている。
でも、音楽は好きだし、結構強豪らしく、定期演奏会には客がたくさん来るので
女にもてるというのはほんとらしい。
ただ、俺には回ってこないけど。
これは、自分で告って手に入れた俺の恋の話だ。
7月のある日のこと、俺は学校をサボった。
テスト前期間なので、部活はない。遊ぶなら今だ。
でも、街中はやばい、補導員がうろついてるからな。
俺は、原付で峠に行ったりして時間を潰していた。
時計を見ると、3時ごろだ。戻る頃には丁度いい時間だ。
今日のバイトは、ない。明日の朝の新聞配達も休みだ。
バイトの給料が入ったばかりで、サイフもあったかい。
ツレとあそぶのもいいけど、ちょっと一人であそぶのもいいな。
俺は、街に戻った。
とりあえず、小奇麗なカフェがあったのでそこに入った。
女の子ばっかりで、やべー。店間違えたと思った。
とりあえず、コーヒーを頼み、持ってた本を読んだ。
「どう考えても場違いだろうな。」
そのときの俺のカッコは、PNBのX-largeにstussyのハーフパンツ。
おまけにスニーカーだ。
店の雰囲気に合ってない。ここはどちらかというときれい目の客が多い
俺はディバックの中から、バイク雑誌を取り出し、読んでた。
もうしばらくしたらツレに連絡とって遊ぼう。
俺の斜め前の席に女子高の制服を着ている4,5人くらいのグループがいた。
やたらちらちら俺を見てる。
どこかで会ってたっけ?
俺のツレには女の子はいないし。
それ以前に俺、女の子の前だと緊張してうまく話せない。
そのグループの中の一人が俺の席まで来て、俺に話し掛けてきた。
俺は、緊張しまくってた。
「あの・・。もしかして、中央高の吹奏楽部の相原さんですか?」
「ああ、俺だけど」そう返すのが精一杯だった。
返事しつつ話し掛けてきたコをチェックした。
見た目は結構上玉だ、しかも眼鏡っこというのがポイント高い。
それからしばらく話した。年は俺とタメ。
俺と同じ部活で、定期演奏会の時に俺を見たという。
話そうと思っても、怖くて話せなかったという。
たまたま、そのコの中学出身の奴が俺の友達にいたのも奏を効した。
そうなったら盛り上がるのは早い。
そのコの集団と盛り上がった。
「最初見たときは、絶対近寄りたくないと思った。」
「意外とお茶目な性格だね。見た目の割には。」
「なんか、進学校の割にはあまりいないキャラだね。」
そんな感じの会話が続き、お目当てのコは俺に聞いた」
「相原さんってカノジョいます?」
「いや、別れたばっかり。空家だよ。」
その子の態度が変わった気がする。マジかわいい。
当然ながら俺も聞いた。
「真希ちゃん(お目当てのコの名前。)、いま彼氏いるの?」
「うーん...。今はいない。」
その間がすっごく気になる。
店を出て、みんなと別れた。
お目当てのコは、偶然にも方向が一緒だ。
俺は、原付を押して一緒に歩いた。
125CCなので二人乗りはできるが、ノーヘルで乗せるわけには行かない。
一緒に歩いてる間、心臓がバクバクいってた。
自慢じゃないけど、その当時まで、自分で告ったのは一度しかない。
それは悲惨すぎる結果に終わったが。
大体が告られて、いいなと思ったらつきあう。
かなりマグロ君だったと思う。
(さて、どうやって告ろうか。)
(やべー。言葉が出てこない。)
(わけわかんねーこと言って嫌われたらやだな)
一緒に家路にたどり着く間俺は、こんなことを自問自答した。
そんなときも会話はやってるもんで、大体が世間話だったと思う。
意を決して、俺は言った。
「どっか寄らない。もっと話したいんだ。真希ちゃんと」
結構いい時間だ。断られるかもしれない。
「..いいよ。」
心の中で、俺はバンザイした。
やがて、大き目の公園についた。
そこは、この時間になると、結構カップルが多くなる。
告るには絶好のタイミングだ。
ふたりでベンチに座った。
俺は、告ろうと言葉を選んだ。
もう、周りは見えない。
俺は言葉を発した。
「真希ちゃん。俺、マジに惚れました。
よかったら、俺とつきあってくれますか」
結構大きい声だと思う。
いま考えると出会ったその日に告るのもどうかと思うが。
「ありがとう。相原くん。私も好き。でもちょっと聞いてくれる。私のこと。」
彼女は話し始めた。なんかあるな、と思った。
かいつまんでいうとこんな内容だ。
つい最近まで、つきあってる彼氏がいた。
かなりのDQNかつしつこい性格らしく、半分ストーカーと化している。
付き合うと、俺に迷惑がかかるかもしれない。
「そんな感じだけど、それでも私のこと好き?」
半分涙目で彼女がいった。
あらためて、「かわいい」と思った。
DQNな元彼に関しては何とかなるだろう。
俺もかなりのイケイケだからな。
通ってる学校の割には。筋系にも知り合いがいたし。
答えはただひとつだけ。
「関係ない。そんなの。俺が守ってやるから。」
もう言葉はいらなかった。
その後、公園でキスをした。
そのまま時間が止まればいいと思った。
もうどれくらい経ったのだろう。とっくに日が暮れている。
家庭の事情で一人暮らししている俺はともかく、カノジョがやばいかも。
急いで帰るために、カノジョの家の近くまでバイクで送った。
カノジョにヘルメットをかぶせ、俺はノーヘルだ。
つかまってもいい。カノジョさえ怪我させなければ。
カノジョの体の感触を背中に受けつつ、どこまでも走っていきたい、と思った。
ふと空をみたら、きれいな夜空だった。
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