The War(1)



雨の日のデリバリーは本当にかったるい。

レインコートから雨がしみこんできて、なんともいえないうっとうしさだ。

でも、もう少しだ。

大事なものを手に入れるため。



俺の名前は、相原 武史。 今は高校の2年だ。

いま、マジぼれでつきあい始めたカノジョがいる。

マジかわいいし。毎日が楽しい。



これは、俺の16年の人生の中で一番きつかった戦いの話だ。

誰と戦うかって?

俺をとりまくいろんなものだったような気がする。



中間テストが終わったばかりだ。

いつものことながら散々な成績だ。

無理もない。柄にもなく進学校なんかに来ちまったからだろう。

当然ながら追試の山だ。

そんなわけで、今、俺は図書館にいる。

カノジョと勉強会ってなわけだ。

カノジョとは学校が違うけど、俺の学校よりも賢いので、

当然、俺が生徒役でカノジョが先生役だ。



カノジョの話を少ししよう。

カノジョの名前は真希。学年は俺とイッショだ。

小柄なだけど、出るところはでてるし。

顔も俺好みだ。

俺と違って、まじめちゃんだ。

俺にないところが、俺をひきつけたと思う。

いつも思うが、なんでカノジョは俺にひかれたのだろう。

そこんところはまだわからない。ちょっと不安だ。



閉館時刻がきて、図書館を出た。

雨は上がっている。ひんやりとした空気に包まれ、

二人は並んで歩いた。



つくづく思う。二人でいるだけで楽しい。

このまま時がとまればいいと心から思えた。

決して卑猥な妄想なんかではなく、

カノジョの体、カノジョの心、カノジョのすべてを

俺の中で包み込みたい。

俺は早く一線を越えたかった。

でも、このままの関係を壊したくない、

一線を越えることで関係が壊れるのを恐れていた。



それに、カノジョの瞳には、何か怯えがかすかに感じられる。

このおびえがどんなものかは知らないが、

俺が取り除いてやりたい。

一線を越えるのはそれからだ。



しかし、俺は後に気づいた。

カノジョの傷は、あまりにも凄惨で悲しいものであり、

それを癒してやるといった俺の世間知らずの馬鹿さ加減も。



この夏、俺の戦いが始まろうとしていた。

大切なものを守るための戦いが。



(続く)





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