ポケットからこまごまとしたものを取り出した。
ガスの切れかけた100円ライター。
焦げたティースプーン。
そして、セロファン袋に散薬のように密封されている
北朝鮮産の砕いた氷砂糖。
「スピード」と裏で呼ばれているそれ。そして、 俺をかりそめの楽園に導いてくれる悪魔のパスポート。
それさえあれば、このコンビニ弁当の空容器と、飲みかけ
のペットボトルが饐えた臭いを発しているこのゴミ溜めみたい
なこのワンルームも楽園になるんだ
ただし、期間限定のかりそめの
楽園だけど。
とどまることを知らない堕落と奈落の底の中で残されたただ1つ
の光明だ。今の俺にとっては。
北朝鮮産の氷砂糖をスプーンに載せ、匙の底から100円ライターで
炙っていく。
やがて氷砂糖は液体になり、気化していく。
気化した煙を鼻で吸い込む。煙を1つ残らずこそげ取るように。
少しずつ、沈んでいた俺の心が靄が少しずつ殺ぎ落とされるように
感じる。多分薬が効いてきたんだろう。
この儀式は煙が完全に出なくなるまで続く。外から見たら、長くて
10分程度の儀式。
だけど、今の俺には1日の全てとなっていた。
気分が良くなったので、俺は持っているスプーンとライターを床に
放り投げた。
今日の氷砂糖はどうやら上物みたいだ。
気分がいいので、俺のことをすこし放してみよう。
退屈かもしれないけど、ちょっと我慢してくれ。
いまのこの体たらくじゃ信じられないかもしれないけど、子供のころの
俺は、親や先生のいうことをきちんと聞く、素直なガキだったんだ。
なんで今は薬に手を出しているかって?
いい質問だ。なんかマスターベーションしたくなるほど最高の気分だ。だから俺に質問した君、
俺の性器を咥えてくれないか。
今夜だったら君の熱く蒸れ濡れているヴァギナに思い切り挿入できるかも
しれない。
きっかけは、上京してからなんだ。
自分でいうのもなんなんだけど、親や教師の言うことをきく素直なガキだった。
おかげで、俺は1流高校、そして1流と呼ばれる大学に行ったんだ。
地元にいるときは、俺、薬に縁がなかったんだ。いわゆる地元の不良が試す
ドラッグといえば、大体シンナーが相場で、奴等はいつも臭い息をハアハア
させて、いつもトロンとした眼をしていて、歯も所々欠けていた。
そして、連れ歩いてる女といえば、いかにも頭の悪そうなブスで不細工な
ヤンキー女だし。
ああ、格好悪いったらありゃしない。
地元にいてそんな風に腐るのなんてゴメンだ。だから俺は猛勉強して、1流
大学と呼ばれるところに入学し、上京したんだ。
上京したときの感想はどうだったかって?
いい質問だ。それに君、咥えるのが上手いな。もう射精しそうだ。君の口内
にぶちまけるから飲み干してくれ。
え?苦かったって?それは申し訳ない。
おわびに君にいいコトをしてあげよう。これ、知っている?
そう、北朝鮮産の氷砂糖を溶かしたものにひたしたバイブレーターだ。
それを君の中に入れてあげよう。だからよつんばいになって、尻を俺の方に
向けてくれ。
効いてきたかな?凄く感じているみたいだな。
よがりながらでいいんで、続けて話を聞いてくれないか?
上京して、すべてが新鮮だったんだ。俺は、長年マジメに生きてた反動で、
瞬く間に遊びを覚えてしまったんだ。
地元と違って親や教師、身内の監視の目がないし、俺を信用しきっている
両親は、俺が言えばいくらだって仕送りを送ってくれるんだ。
そして俺は初めてセックスの快楽を知ったんだ。そして、それがドラッグ
をきめると更に倍増することを。
それは、「地道に生きればしあわせになる」という価値観を持ってた俺を
壊すには十分過ぎる破壊力だったんだ。
知り合った遊び仲間は、いずれも「勤勉」や「実直」と無縁の奴らだった。
いつのまにか俺も、奴らの考えがデフォルトだと勘違いしてしまったんだ。
本当はそんなこと100マイルも違うんだけど。
で、操るつもりが操られ、今はこの体たらくだ。
ちょっとダウナーになってきたな。なんか悪いネタが混じっていたのか?
君のヴァギナに挿入して気を紛らわせることにしよう。何度も絶頂に達している
君を見ていると、俺も劣情が高まって我慢できない。
生で入れさせてもらう。
ああ、凄くいい。君の膣壁が俺を締め付ける。この世と思えない快楽。
まるで全身が快楽器官になったようだ。
天国ってこんな感じなんだろうな。
いつもと凄く違う。ああ、激しくグラインドしている俺がいる。
この世の最期がそんな感じだったら最高だ。
正直、薬が切れると、死にたい衝動に駆られてしまうんだ。
無数のゴキブリが俺の体表を蠢きまくり、無数の百足に身体を噛まれてしまう
苦痛しか感じなくなる。
そして、苦痛から逃れるためにかりそめの楽園に退避する。
でも、こんなことも今日が最期だ。
なんでって?
もう、北朝鮮産の氷砂糖を買う金も底を尽いていて、今は闇金融に手を
出してしまってもうどうにもならないんだ。そして明日が支払期日だ。逆さに振っても鼻血すら出ない。奴等の回収手段は1つしかない。
俺の身体で、俺は保険掛けられて、冷たい海の底だろう。
コンクリートの棺に身体を横たえて。
ああ、もう絶頂に達してしまう。
俺は、残りの氷砂糖を口に入れ、思い切り噛み砕き、味わうように飲み込んだ。
いつもの5回分の量。永遠の天国に行ける神様に払う賄賂にしては十分過ぎる
量。
俺は更に腰を激しくグラインドさせ、君のふくよかな乳房を激しく揉みしだく。
君は野獣のように激しく歓喜の声を上げる。
もう何度も快楽の波が押し寄せている。俺は、涙と涎を流しながら、更に激しく
腰をグラインドさせる。
今までにない大きな快楽の波が押し寄せる。
その瞬間、俺は彼女の膣内に射精した。
そして、目の前に映る風景は、永遠の闇につつまれた。